冷却塔(クーリングタワー)を新たに導入する場合や老朽化などに伴い交換する必要が生じた場合、どの製品を選ぶかを決める必要があります。
メーカーや開放式や密閉式という冷却方式の違い、騒音規制値のクリア、設置スペースや送風機出力の制限等をクリアした上で性能などで機種を選定します。
その上で、さらに容量で絞り込まなくてはなりません。
冷却塔の性能検討は循環水量、入口温度、出口温度、外気湿球温度が必要ですが、「冷却容量」は循環水量、入口水温、出口水温の3つの条件で決まります。ここがポイントです。
実は「冷却容量」は主機側の必要な熱交換量を満たしているかどうかの判定基準となります。
主機が冷凍機の場合は地下室に設置されることが多く、外気条件はほとんど影響しません。
しかし、冷却塔は大気圧の下、外気条件によってその性能は大きく変わります。
主機から戻ってくる循環水の入口水温が同じでも外気湿球温度の違いによっては出口水温は変化します。
冷却塔(クーリングタワー)の容量計算とは
冷却塔(クーリングタワー)は水冷式のパッケージエアコンやチリングユニットをはじめ、吸収式冷凍機やターボ冷凍機などを用いた空調システムに欠かせない装置です。
また、電気炉やコンプレッサーあるいは樹脂成型機などの冷却水が必要な製造機器の冷却システムにも欠かせません。
用途やニーズに合わせ、開放式、密閉式の冷却塔を導入することになります。
冷却塔の性能は循環水量、入口温度、出口温度、外気湿球温度との相互関係が大きく影響します。
循環水量と入口水温は比較的コントロールしやすいのですが、出口水温と外気湿球温度はコントロールがむずかしく、特に外気湿球温度はお天道様にしか分かりません。
そう言いながらも外気湿球温度の設定は欠かせません。どのように決めるかで冷却塔の選定が変わってくるわけです。
一般的にはその地域の気象データから、年間の最高温度に近い値が設定されているようです。特異日は除かれていると思います。
従って、設置する場所の実際の条件や想定される温度などを踏まえて、あらかじめ計算を行い、より最適な冷却能力を持つ製品を選定できるようにすることが大切です。
冷却塔(クーリングタワー)の容量計算の目的
冷却塔(クーリングタワー)の容量計算の目的は、選定した機種が主機が求めている熱交換容量を満足しているか判断することです。
冷却塔の冷却容量は、前述したように循環水量、入口温度、出口温度をもとに計算することができます。
あくまで、設計条件(使用条件)での冷却塔の能力を示しています。
しかし、実際には前述したように外気湿球温度は変化しますし、主機側の負荷も変わることから入口水温も変化します。循環水量も変わることがあります。
循環水量と入口水温が一定でも、外気湿球温度が変われば出口水温は変化します。
しかし、一概に入口水温と出口水温の温度差が大きいから、冷却塔の性能が良いというわけではありません。
中間期や冬期など設定湿球温度より外気湿球温度が低い場合は、循環水は設定出口温度より低い温度となり、冷却容量は設定値を上回ることもあります。
逆に循環水量が設定値で、外気湿球温度が設定湿球温度より低い場合に、循環水温度が設定温度に近いか超えてしまう場合は、故障の可能性もあるので注意しなくてはなりません。
冷却塔の容量を計算できるようになるとともに、今回述べた冷却塔の4つの条件の関係性が理解出来るとより最適な機種や容量のものを選べるようになります。
容量計算をした上で、最終的には各メーカーから現場調査などを実施してもらい、条件やニーズを打ち合わせた上で、最適な機種の提案をしてもらうことが必要です。
その際の提案が見合ったものであるのかを納得するためにも、容量計算の方法や冷却塔の特徴を理解しておくことが役立ちます。
冷却塔(クーリングタワー)の容量計算の計算式
冷却塔(クーリングタワー)の容量計算について計算方法を見ていきましょう。
冷却塔では「熱量」に関する単位でJ(ジュール)がベースになります。
基本的には、W(ワット)を使用し、多くの場合、冷却塔ではkW(キロワット)で表示されます。
1kJ(キロジュール)は、1気圧で1kg(キログラム)の水を1/4.18605℃上昇するのに必要な熱量です。
1kW(キロワット)は、1秒間に1kJ(キロジュール)の仕事することをいいます。その関係式は次の通りです。
1kW = 1kJ/s
1気圧とは、1013ヘクトパスカルのことで、日常生活をしていれば「普通」と感じる天候のときの気圧です。いわゆる「大気圧」です。
計算に必要な要素は次の通りです。
L=冷却水量(㎥/h)
Cp=水の定圧比熱=4.18605(kJ/kg・℃): 1kgの水の温度を1℃上昇させるのに必要な熱量
⊿t=入口水温と出口水温の差(℃):レンジと呼びます。
計算式)
冷却容量(Hc) = L(m³/h)×1,000(kg/㎥)×Cp(kJ/kg・℃)×⊿t(℃)/3,600(s/h)=?(kJ/s)=?(kW)
上の冷却容量を求める式をよく見てください。
L=循環水量、Cp=水の定圧比熱、そして⊿tしかありません。⊿tは入口水温と出口水温の差であり、外気湿球温度が含まれていません。
これが、前述した「実は〔冷却容量〕は主機側の必要な熱交換量を満たしているかどうかの判定基準となります」と言った所以です。
ただし、外気湿球温度が関係ない訳ではありません。
とても重要なファクターです。
出口水温と外気湿球温度の差をアプローチと呼び、5℃程度を見込むのが一般的です。
一般的な例ですが、循環水量と入口水温(37℃)、出口水温(32℃)の差=レンジが一定の場合、アプローチが大きくなれば、冷却塔のサイズは小さくなります。
逆にアプローチが小さくなれば冷却塔のサイズは大きくなります。
概略ですが、アプローチ=5℃の時、冷却塔のサイズを100とすれば、アプローチ=6℃の場合は約90%になり、アプローチ=4℃の場合は約130%になります。
(アプローチ=5℃の時、外気湿球温度は27℃、6℃の時は外気湿球温度は26℃、4℃の時は外気湿球温度は28℃となります。)
これを「冷却塔の一般的特性」と言いますが、「外気湿球温度」の設定一つで冷却塔のサイズが変わってくることを理解して貰えれば幸いです。
まとめ
冷却塔(クーリングタワー)を選ぶ上では使用目的や設置環境や求める効用などに合わせて冷却能力や容量などを検討することが大切です。
選定にあたっては各メーカーで現場調査などを行って、最適な機種が選べるように提案もしてもらえます。
もっとも、メーカーに相談する前に冷却容量や性能に関するアプローチの影響などが理解できるようになると、メーカーの提案を鵜呑みにせずにコストパフォーマンスに見合った最適な機種を選べるようになるかもしれません。