冷却塔(クーリングタワー)の不凍液について、この記事ではその用途や濃度などをご紹介します。
不凍液は、気温が下がる時期の対策として不可欠なものです。
各種メーカーがさまざまな不凍液を開発していますが、用量や用法を正しく守ることが大切です。
意外と知らない不凍液の利用方法についても併せて、この機会に確認してみてください。
冷却塔(クーリングタワー)とは?
冷却塔(クーリングタワー)とは冷凍機などの熱源機器と組み合わせて用いられる、温められた水を冷やす機械です。
冷却塔は、主に以下の4つのパーツが組み合わさることで機能しています。
- 散水装置・・・温められた冷却水を熱交換器に散水するための装置
- 送風機・・・外気を取り込み、冷却水と空気を接触させるための装置
- 熱交換器・・・冷却水と外気が接触し、熱交換を行う装置
- 水槽・・・冷却水を溜めておく水槽
工業用の冷却塔は室内を冷やすためではなく、さまざまな機器の冷却に使用されます。
かつて、工業用の冷却水には地下水や河川水が使われ、排水処理をして河川や下水に流していました。
冷却塔を使うことによって水を再利用できるため、節水につながり自然環境の負担を減らすことができます。
冷却塔には開放式と密閉式があります。
開放式は空気と冷却水を直接接触させることで冷却水を冷やします。
冷却効率が良いのはメリットですが、冷却水が汚れやすいのでメンテナンスが必要となります。
密閉式は冷却水と空気が接触しないので、冷却効率は開放式に劣るものの、冷却水が汚れにくいのがメリットです。
温度が下がる冬期などの使用には、冷却水の凍結防止に配管の保温や加湿そして下部水槽へのヒーターの取り付けとともに不凍液を入れる場合があります。
なお、冬期に使用しない(運転停止する)場合は開放型でも密閉型でも水抜きが必要です。
循環水系統や給水管系統の配管そして下部水槽の水抜きを行ってください。
チラーとの違い
チラーとは水を循環させて冷却や加熱、温度を制御する装置です。
冷却水循環装置ともいわれます。
冷却塔(クーリングタワー)と似たような装置で混同されがちなので、簡単に説明しておきます。
冷却塔は温められた冷却水を冷やして、冷凍機や機器を冷却することが目的であり、チラーは温度を一定に保つことが目的です。
チラーには、冷やす他にも温めることもあり、常に一定の温度に保つという仕組みとなっています。
凍結とは?
冷却塔(クーリングタワー)における凍結とは冷却水などが凍り、循環水や散布水そして給水用配管などが破裂することを意味します。
密閉式冷却塔内にある銅コイルが冷却水の凍結により、破損してしまいます。
冷却塔の凍結対策を怠ると後々大変なことになってしまいますので、メンテナンスがしっかりしたメーカーや業者を選ぶことも大事です。
不凍液とは?
そもそも不凍液とはどのようなものなのでしょうか。
不凍液は名前からわかる通り、凍結温度が低い液体のことです。
身近なもので言えば、車のエンジンを冷却するラジエターや床暖房などに使用されています。
床暖房やボイラーなどは温まった不凍液で家中を暖かくする機能があります。
それならば水を温め続ければ良いのでは?という疑問がわきます。
しかしその場合は、24時間止まることなくボイラーを稼働する必要があり効率が悪くなります。
そのため、凍らない不凍液が有効なのです。
不凍液は交換が必要で、交換しないと機器の中を循環する液体が凍結したり、効果がなくなるなどの弊害が起きてしまいます。
しかし、不凍液はなぜ凍りにくいのでしょうか?
不凍液の成分は主に、エチレングリコールやプロピレングリコールなどです。つまり、凝固点(液体が凍る温度)が低いのが特徴です。
メーカーによって色も成分も違ってきます。
エチレングリコールは、濃度によって性能や機能に差が生まれますので、適切な濃度にする必要があります。
濃度が濃くなり過ぎないようにしないと機器の中の循環が悪くなり、機能の低下につながります。
なお、エチレングリコールは毒性があります。そのため、廃液を河川や下水に流すことはできません。
冷却塔(クーリングタワー)に使用された不凍液は、冷却水同様に適切な排水処理を行う必要があります。
また、メーカーによって種類が違いますので、他の不凍液を混ぜると故障の原因となってしまいますので注意が必要です。
特に飲料工場や食品工場などに使用する際は、食品添加物公定管理書記に記載されている物質で構成されるものを使用することをお勧めします。
不凍液の濃度
不凍液は濃度によって凍結温度が異なるのが特徴です。濃度管理を適切に行う必要があります。
一般的な耐用年数は2年間程度、点検は年2回程度が理想的です。必要に応じて交換や補充を行ってください。
点検の際は、変色や濁り、臭気や沈殿物などをチェックします。
また、濃度計を使用して不凍液の濃度を測定する必要があります。
いずれもプロに任せる方が安心です。
なお、不凍液は夏期でもそのまま使用できますが、水とは特性が異なるので冷却塔(クーリングタワー)の性能が低下する恐れがあります。
そのため、不凍液の使用は冬期だけにとどめておくのが理想的ですが、その入れ替えなども大変です。
冷却塔選定時にご相談されることをお勧め致します。
冷却塔(クーリングタワー)の凍結防止方法
冷却塔(クーリングタワー)は主にビルや商業施設、工場などで使用しています。
地下水や河川水に取って代わったころは夏期に運転し、冬期は運転停止していましたが、最近では年中稼働するシステムもあり、定期的なメンテナンスが必要です。
特に冬などの寒い時期に運転する際には注意が必要になります。
水の凍結に関しては一般家庭でも気をつけるべきことですが、工場やビルでも配管内の水が凍結する恐れがあり、冷却塔が故障してしまうと業務に支障をきたしてしまいます。
まずは、冬期に運転を休止する際の注意点からご紹介しましょう。
下部水槽にヒーターが設置されている場合は、あらかじめ電源が切ってあるか確認してください。
その上で下部水槽のドレンを開放して水抜きを行います。循環水配管や給水配管も併せて水抜きをお願いします。給水配管は保温も重要です。
次に運転再開するまではドレンは開放したままにしておきます。
また、運転休止中は1ヶ月に一度、モーター軸やポンプ軸、ベアリングボックス軸を手動で空回しする必要があります。
冬期も運転する際の注意点
凍結の可能性がある場合は、冷却塔(クーリングタワー)が凍結していないか、雪が付着してないかなど周辺の確認を行う必要があります。
ファンの周辺などに雪が付着したまま運転してしまうと、破損してしまう恐れがありますので注意してください。
また、配管の保温や加熱も凍結に効果的です。気温や風速、配管径などにより適切な保温材を選んでください。
それでも凍結が防止できないような気温においては、下部水槽にヒーターを設置すると凍結防止に効果的です。
一般的に凍結防止ヒーターには電気ヒーターを使用します。
電気ヒーターを用いる場合は、火災防止のための温度ヒューズとサーモスタット内蔵のヒーターを使用すると安心です。
なお、空焚き防止のため下部水槽に水がない場合には、電源が入らない回路にする必要があります。
特に密閉式冷却塔は十分な凍結対策をしないと、運転不能になる恐れがありますので注意が必要です。
一般的に、冬期は外気温が下がるため、出口水温が下がります。
冷却水などの循環水の温度調整のためにバイパス運転の負荷を調節したり、ファンの運転を制御することが効果的です。
そして、不凍液の注入が効果的なのです。
不凍液の注入方法
しかし、不凍液に関してはさまざまな種類があり、取り扱い方法も違います。
ここではエチレングリコール主体の不凍液を例にした注入方法を見ていきましょう。
1.冷却水系の水量算定
2.不凍液使用濃度の算出
3.水抜き
4.洗浄
5.不凍液注入
6.エア抜き
7.循環運転
8.濃度の確認
以上の流れになります。
不凍液の注入に関して、注入だけではなく廃液処理も一括で作業してくれる冷却塔メーカーや専門業者がおすすめです。
まとめ
今回は、冷却塔(クーリングタワー)の凍結防止策における不凍液の役割や効果などを解説しました。
冷却塔には冷却水が使用され、冬など気温が下がる季節では配管が凍結してしまう恐れがあります。
ヒーターや不凍液などでしっかりと凍結対策をすることによって、被害を防ぎましょう。