建物を管理する人の中には、冷却塔(クーリングタワー)のスライムに頭を悩ませている人もいるのではないでしょうか。
本記事では、冷却塔を維持管理するために必要不可欠なスライム対策について紹介します。
スライムが発生する原因やスライムが冷却塔に及ぼす被害、そして対策について詳細に説明しますので、ぜひご覧になってみてください。
冷却塔(クーリングタワー)のスライムとは
冷却塔(クーリングタワー)のスライムとは冷却水中に増殖した微生物の出す粘性の物質です。
スケールや腐食、レジオネラ菌とともに冷却塔の4大障害に数えられるものでもあります。
主な原因は、冷却水の濃縮や水質管理不備です。
冷却塔(クーリングタワー)のスライムの原因
冷却塔(クーリングタワー)の中は、微生物が育つのに最適の環境と言われています。
そのため、冷却塔を運転していると、どんどん冷却水の中に微生物が増えてしまいます。
微生物の中には、粘性の物質を作り出すものもおり、それが大きく固まってくるとスライムになるのです。
大気中を漂う微生物が冷却水に混入することで増殖します。
開放型の冷却塔においては、空気中からの微生物の混入は避けられない問題と言っても良いでしょう。
また、冷却水の補給水は原則市水とされていますが、水質管理のされていない井水等を使っている場合は特に注意が必要です。
建物によっては井水を冷却水として使用していることもあるため、主な侵入経路になり得てしまうのです。
微生物は、いつでも発生しやすいというわけではなく微生物の発生には水温が大きく関係しています。
最も微生物が繁殖しやすいのが夏場で、30℃から40℃という微生物が好む環境になります。
これにpHなどの条件が重なることによって、微生物は爆発的に増えて、スライムを形成します。
また、冷却水の濃縮も微生物にとって都合の良い環境を作り出してしまいます。
冷却水の濃縮を防ぐためには定期的なブローダウンが重要にります。
コスト増加を嫌って、ブローダウンを怠っている場合スライム発生の大きな原因になってしまいます。
スライムによる5点の被害
冷却塔(クーリングタワー)にスライムが発生することによって起こりうる被害を紹介します。
スライム障害が発生すると充てん材の性能が低下し、ランニングコストが増加する、最悪熱源機器の運転が停止する可能性もあります。
また、水質管理を怠っていると、スライムだけではなくスケールや腐食のリスクも発生するのです。
さらに、レジオネラ属菌のように人の健康を害するような被害が発生する可能性もあります。
被害1.スライム障害
冷却塔のスライム障害とは、冷却水の中に微生物が増えすぎることによって発生する被害です。
微生物の中には悪臭を発する種類もいるので、周辺環境の汚染被害が考えられるでしょう。
建物を利用している人々から苦情が入る可能性もありますし、周辺の建物の人々とのトラブルになることもあります。
また、微生物は悪臭だけではなく有害物質を発することもあるため、健康被害が発生することもあるでしょう。
冷却塔を管理する設備員や建物内の利用者に健康被害が及ぶこともあるのです。
有害な微生物はたくさん存在しますが、冷却塔関連でいえば代表的なのはレジオネラ属菌です。
冷却水中に増殖したレジオネラ属菌が空気中に飛散すれば、レジオネラ症を発症してしまう人もいるかもしれません。
被害2.充てん材性能の低下
冷却塔は、冷却水を熱交換させることによって、その効果を発揮します。
そのため、低下には常に注意を払う必要があります。
冷却塔にスライムが発生すると熱交換を妨げる原因になり、一説にはスケールを放置した場合と同等の熱伝導率の低下が発生するとも言われているのです。
充てん材性能が低下するとコストがかさみ、また空調になんらかのトラブルが発生する可能性があります。
夏場の暑い時期に、冷凍機が止まってしまうとその建物を利用する人々に多大な影響を及ぼします。
被害3.清掃の手間が増える
冷却塔にスライムが頻繁に発生すると、清掃の手間がかかります。
適切に水質管理された冷却水は、最小限のメンテナンスコストで済みます。
しかし、水質管理を怠ると本来は必要のないようなメンテナンスコストが発生し、冷却塔の清掃の回数が増えてしまいます。
被害4.スケール障害
スライムと直接的な関係はありませんが、スライムが発生する冷却塔は冷却水の適切な水質管理がされていない可能性が高いです。
そういった環境においては、スケール障害が発生しやすくなります。
スケールもスライムと同様に、冷却塔の性能を著しく低下させる存在になるのです。
被害5.腐食により冷却塔の寿命を縮める
こちらも冷却塔のスライムとは直接的な関係はありません。
しかし、水質管理のなされていない冷却塔においては、腐食障害が発生しやすいです。
水質管理されていない冷却水は配管や熱源機の熱交換器などを腐食させる原因になり、腐食が進むと熱交換器に穴を開けることがあるのです。
この状態になってしまうと修理や交換が必要になってしまうので、かなりの損失になってしまうでしょう。
水質管理のための費用を節約して、冷却塔や熱源機をダメにしてしまったのでは、まさに本末転倒です。
冷却塔(クーリングタワー)のスライム対策
冷却塔(クーリングタワー)のスライム対策について紹介します。
冷却塔の清掃をしたうえで、薬剤による水質管理がおすすめです。
また、計画的に定期的なブローダウンを管理に組み入れることや補給水の系統を見直してみるのも良いでしょう。
対策1.冷却塔の清掃
冷却塔のスライムによる障害を防止したり対策したりする場合には、水質管理が有効です。
しかし、すでに発生してしまったスライムに対しては清掃するしかありません。
水質管理をする場合でも、一度スライムやスケールを除去する必要があります。
スライムが発生した状態で、水質管理のための薬剤を入れても十分に効果を発揮しない可能性があるからです。
スライムを除去する方法は、人の手による清掃や高圧洗浄機を利用した洗浄方法があります。
ただし、充てん材の清掃には高圧洗浄機は使用しないほうがよいでしょう。
破損の原因となってしまいます。
対策2.定期的な冷却水のブローダウン
冷却塔における冷却水のブローダウンは、水質管理の意味合いがあります。
冷却水が濃縮されてくると、水質の悪化につながります。
そのため、定期的に冷却水をブローダウンすることによって冷却水の濃縮を防ぐのです。
当然、ブローダウンされた分は補給されることになるのでランニングコストの増加につながりますが、冷却水が濃縮されてトラブルが発生するよりは良いでしょう。
自動ブロー装置の設置も有効です。
対策3.薬剤で水質管理をする
薬剤による水質管理は、スライム防止の要となる対策でしょう。
水質管理のための薬剤はスライムだけではなく、藻やスケール、腐食をまとめて防ぐことのできる性能が必要です。
特定の対策に特化してしまうと、そのほかの対策が疎かになってしまうので冷却塔のトラブルをまとめて防げるような薬剤を選ぶようにしてください。
都度投入するタイプだけでなく、冷却塔に付属設置しておくと継続的に効果を発揮してくれるタイプの商品もあるので、状況に合わせて使い分けると良いでしょう。
スライムコントロール剤についてはこちらの記事をご参照ください。
対策4.井水の補給水をやめる
冷却塔の補給水に井水を使っているという場合もあるでしょう。
井水は水質管理が難しいと言われており、水道水などに比べると水質管理のコストも大きくなってしまいがちです。
そのため、補給水系統の変更を考えるのが良いかもしれません。
補給水が井水の場合、そこから微生物が混入する可能性もありますしスケールや腐食のリスクも高くなっています。
井水はコスト面のメリットがあると言われていますが、冷却塔のメンテナンスコストなども踏まえると必ずしも井水がコスト面で優れているとは言い切れないのです。
まとめ
冷却塔(クーリングタワー)を管理するうえで、スライム対策は必要不可欠であることがわかったのではないでしょうか。
スライムが発生してしまうと、冷却塔にさまざまな不具合を発生させる可能性があります。
また、スライムが発生するような冷却塔は、水質管理が不十分であるためスケールや腐食によるリスクも大きいです。
水質管理を徹底することにより、スライムによる被害を抑制できるだけではなく、スケールや腐食による被害も同時に抑制することができます。
レジオネラ属菌などを発生させてしまうと、被害は設備だけに留まらず、人に深刻な被害を与えてしまう可能性もあるのです。
このように冷却塔の管理とスライム対策は切っても切り離せないものになります。