セントラル空調システムには欠かせない冷却塔(クーリングタワー)。
冷却塔では冷却水や補給水を使用していますが、安全・安心に使い続けるには水質検査に基づいた管理が必要です。
では、どのように水質検査を行うのでしょうか。
ここでは、冷却塔の水質検査などの管理方法を紹介していきます。
冷却塔(クーリングタワー)の水質検査とは
冷却水は、循環するたびに成分が濃縮傾向になります。
また、外気を利用して冷却水を冷やすため、周囲の環境にも影響を受けます。
このようなことから、冷却塔(クーリングタワー)では清掃やメンテナンスなどの他に水質管理が必要となります。
そのひとつに水質検査があります。
水質検査を定期的に行うことにより、原因となるものを把握し適切な対応を行うことで、冷却塔を長く使うことができるのです。
水質検査では、冷凍空調機器用水質ガイドライン(JRA-GL-02-1994)に則り、冷却水・補給水の水質基検査を実施します。
調べる項目は下記の項目になり、それらは『腐食』と『スケール生成』につながる因子です。
基準値項目
pH(25℃)/電気伝導率/塩化物イオン/硫酸イオン/酸消費量(pH4.8)/全硬度/カルシウム硬度/イオン状シリカ
参考項目
鉄/銅/硫化物イオン/アンモニウムイオン/残留塩素/遊離炭酸/安定度指数
補給水を含む冷却塔(クーリングタワー)の水質が変化する2つの原因
きれいな状態で冷却水を使用することが一番ですが、さまざまな原因によって水質の変化が起きてしまいます。
その原因について解説していきます。
原因1.循環による成分濃縮
開放式冷却塔(クーリングタワー)では冷却水と外気が直接触れることで冷却水が冷却されますが、外気とともにさまざまな異物も侵入します。
また、侵入した異物は冷却水の中にいる微生物を増殖させる原因にもつながり、さらに水質を汚してしまいます。
原因2.外気からの異物の侵入
冷却塔で使用する冷却水は、循環して何度も使用できるような仕組みになっています。
しかし、循環をしていくうちに冷却水は蒸発します。
当然、蒸発した分は補給されますが、それでも濃縮が進んでいきます。
これが水質を変化させてしまう原因の一つになります。
循環によって濃縮された循環水や異物が混ざった状態のまま使い続けるだけで、装置や配管などの至るところに問題を発生させてしまうのです。
冷却塔(クーリングタワー)の水質管理を怠ると発生する3点の被害
水質管理にはコストがかかります。
しかし、コストがかかるからといって水質管理を怠るとさまざまな被害が出てきます。
被害1.腐食障害
装置や部品に腐食が発生すると、サビが発生したり孔食が起きたりしてしてしまうこともあります。
腐食が進行してしまえば、塗装や部材交換が必要になります。
被害2.スケール障害
冷却水の濃縮にて不溶解成分が、装置や管の中に付着・堆積したものがスケールです。
カルシウム・マグネシウム・シリカなどの無機物が原因です。
スケールが装置に付着すれば、機能低下を起こし、配管の中で堆積すれば閉塞し詰まりなどに。
さらに、その状態で放置してしまうと、腐食という問題が発生してしまいます。
いずれにせよ、放置はトラブルのもとです。
被害3.スライム障害
冷却塔の中は微生物が増殖するには快適な場所です。
カビ・細菌・藻類などの微生物がいる中に泥などの汚物が混じることで塊になり、そこから分泌させる粘着性の物質をスライムと呼びます。
スライムが発生すると、装置や配管に付着します。
また悪臭の原因にもつながります。
スライムをそのままにすれば、腐食の原因や能力不足につながります。
冷却塔(クーリングタワー)の水質検査は義務化されているのか
建築物衛生法に則り、冷却塔(クーリングタワー)の水質検査および維持管理は義務化されています。
そのため、定期的に水質検査をしなければなりません。
冷却塔は開放式・密閉式ともに義務化されているので、密閉式だからという理由で検査しなくていいというわけではありません。
冷却塔(クーリングタワー)の水質を維持するための3つの対策
義務化されている冷却塔(クーリングタワー)の水質検査ですが、検査結果の後どのような対策をしなければならないのでしょうか。
ここでは、具体的な対策方法を紹介していきます。
対策1.冷却水への薬剤投与
薬剤を投与することにて、水の中で発生しやすい『腐食』『スケール』『スライム』『レジオネラ』の発生を抑制することにつながります。
薬剤投与には管理基準があり、それに則る必要があります。
薬剤量もそれぞれ違うため、計算されたうえで必要な量を投与します。
冷却塔の薬注装置についてはこちらの記事をご参照ください。
対策2.水処理(ろ過)装置の使用
冷却水には、目には見えない微生物や不純物、汚れなどが混入しています。
これらはいずれ問題を引き起こすため、薬品で微生物を排除したり、ろ過して不純物などを取り除くことができる水処理装置の使用により水質維持が可能になります。
規模にもよりますが、投資費用は大きくなります。
対策3.ブロー調節
循環により濃縮された水に補給水を入れることで、濃縮された成分が基準以下になるよう調節するのがブロー調節です。
冷却水は循環するたびに不純物が濃縮するため、汚れも酷くなってしまいます。
そのような汚染した状態で使用し続ければ、問題が発生する環境になるため、調節によってクリーンな状態を維持しているのです。
主なブロー調節は、『オーバーブロー』『ブロー配管取り付け』『タイマー連動による自動ブロー』『自動ブロー装置の設置』などです。
まとめ
外気に触れる以外、大きな問題はなさそうな冷却塔(クーリングタワー)ですが、水を使用していればさまざまな問題が発生しやすいのは事実です。
しかし、水質検査を行い基準値内での運用を行えば、水質を保つことにつながります。
問題が発生する前に、必ず検査を行い適切な処理を受け、冷却塔の水質管理をしてください。